あらすじとプロット

 お話のおおまかな筋を表す言葉として、あらすじとプロットという言葉が思い浮かびます。二つの言葉は同じものなのでしょうか。また小説を書く上で役に立つのでしょうか。

 一つずつ順番に見ていきましょう。

あらすじとは

 あらすじとは、ストーリー全体を簡潔に書いたものです。梗概(こうがい)ともいいます。

 文芸賞(新人賞)に応募する原稿では、たいていの場合、あらすじを付けるように指示があります。この場合のあらすじというのは、主人公がどこにいて、何をして、どうなったのか、最初から最後までを全部簡単に書く必要があります。文庫本の裏側に書いてある、「出だしだけ書いてあって続きが気になる」という売り込み文章ではありませんので注意が必要です。

 一方、WEB小説で投稿する際にも、あらすじを書く欄があります。このあらすじは読者が真っ先に読めるようになっていますので、オチまで書いてはいけません。自分の小説がどれだけ面白いか売り込み、続きを読みたくなるように書きましょう。

 ということで、あらすじには二種類あるということが分かりました。これから小説を書いていくにあたって重要なのがどちらかというと、新人賞に投稿するような、「始まりから終わりまで全部書いたあらすじ」の方です。

 小説を書き終えたなら、公開するしないにかかわらず、必ず新人賞向けのあらすじを書くようにしましょう。文章をまとめる力がつきますし、あらすじを書いていくと本文の退屈な部分、手を加えられる部分が見えてくることもあります。

 また、小説を書き始める前にあらすじを作り込むのもおすすめです。誰がどうしてどうなった。あらすじにはすべて書かれていますので、そこに風景やセリフ、服装など情報を書き加えていくと、小説が完成してしまいます。

 計画なしに書き始めて、途中で続けられなくなって投げ出す、というパターンがなくなるでしょう。あらすじ作りはレベルアップの近道ともいえますので、取り組んでみてほしいと思います。

プロットとは

 プロットとは、小説を書くための設計図です。

 あらすじは人に読ませるのが目的ですが、プロットは作者のためだけに存在します。自分が書くための覚え書きですので、特に書き方が決まっているものではありません。

 短編でも長編でも、ストーリーやキャラが交錯する動きをするなら、プロットを作った方が良いでしょう。自分が混乱しないためです。

 例えば次のような、少しでも入り組んだストーリーがあったとします。

・誰がこうしてこうなった
・から
・誰がああしてどうなった
・と見せかけて
・実は誰がそうしてそうなっていた
・のは
・以前彼がああしてああなっていたからであり
・だからこそ今誰がどうして……

 こんなストーリーをいきなり書くのは難しいですよね。矛盾なく書ききるために、あらかじめ準備しておくのがプロットです。当然ながら、自分が分かりやすいように作りましょう。

 時間軸が交錯する、または複数のストーリーが並行するなら、エクセルなどの表計算ソフトで整理するのが良いでしょうし、登場人物の相関図が複雑であればノートにフリーハンドでうねうねと書き出すのも効果的です。こういう時はパソコンよりもノートの方が活躍するかもしれませんね。

 プロットは、本文にとりかかる前に、小説の完成度を高めるために用意するもの、という意識をすると効果的です。

プロットの功罪

 世の中には『精緻なプロット!』などと称賛される小説があります。これは、普通の人には到底書けない入り組んだストーリーが見事に成立している! といった意味合いですので、とても名誉な称号だと言えます。

 こういう作品を読むと、プロットを練り込めば良い小説が書けると思いがちですが、必ずしもそうではありません。

 どういうことかというと、プロットは設計図ですから、完成した小説は設計図通りのものにしかならないということです。「せっかくプロットを作ったのだから、あとはプロット通りに作るだけだ!」……こうなると閃き脳が死んでしまいます。もし、プロットが大して面白くなかった場合、できあがる小説もやはり面白くないものになってしまいます。

 また、プロットは読者に「作為」を感じさせてしまうという副作用があります。プロットを作り込まないと成立しないストーリー。終盤のどんでん返しのために序盤から張りめぐらされたいくつもの伏線……読者は、「ああ、よく『作って』あるなあ」と感じます。

 小説は、「読者に登場人物の人生を追体験させる」という側面があります。その人生が、作者によって作られたものだと分かってしまうと、熱が冷めてしまうかもしれません。「ああ、夢中になって読みふけっていたが、この人生だってただの作り物ではないか……」なんてことになったら、もったいないですよね。

 そういった訳で、いわゆる文学作品においては、プロットを練るというのは、あまりやり過ぎない方が良いでしょう。皆さんが読んだことのある文学作品を思い出してください。あまり作為を感じさせるものはなかったはずです。一人の人物が問題を抱えていて、周囲の流れに逆らって、時に流されて、そうして成長して、新しい場所に行き着く。そんな緩やかなストーリーであれば、プロットは不要かもしれません。

 ということで、反対にプロットが生きるのはエンタメ小説ということが見えてくると思います。「ターゲットを満足させる」という目的にとって、プロットは強力な武器になります。ターゲットの趣味に合ったものになっているか、ターゲットが嫌がる要素が入っていないか、プロットを作り込むほど、満足してもらえる確率が高くなるでしょう。

 自分の目指す小説について、どの程度プロットを練り込むのか少し考えてみてください。

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