二種類の伏線

 小説を書かないまでも、読んだことがあるなら「伏線」という言葉を聞いたことがあるでしょう。何も小説に限ったことではないですね。アニメでもマンガでもドラマでも映画でも、ストーリー作品を楽しんでいると、「伏線」という言葉と出会うチャンスがあるはずです。

 今回はこの伏線について詳しく見ていきたいと思います。

伏線とは

 伏線というのは簡単にいえば、後に明かされる事実のために、あらかじめばらまかれている描写のことを指します。意外な結末型の「ショートショート」や、事件解決の手掛かりが必要となる「推理小説(ミステリ)」では重要な要素です。

 また、そういった遊び心の大きいジャンルでなくとも、ごく普通のストーリーであっても伏線は重要です。

 例えば強いヒーローが病気で敗北するなら、その兆候が前もって描かれなければなりません。やたらと咳き込むシーンや、そんなに激しく動いていないのに大量の汗をかく、などの描写が入るべきです。

 もし今まで伏線についてあまり注目していなかったのだとしたら、お手元の作品を読み返してみてください。そして伏線に注目してください。また違った楽しみ方ができると思います。小説に限らず、マンガや映画も同様です。

 さてここから先は私の個人的な考えで、記事のタイトルでもある二種類の伏線について見ていきます。

 一つは「張る伏線」、もう一つは「伏せる伏線」です。

張る伏線

 先程の「やたらと汗をかく」などが該当するのですが、他にも色々なパターンがあって、ある場所に向かおうという時に、「今にも雨が降りそうだ」などと書くことも、張る伏線です。これが書いてあることによって、「何か嫌なことが起こりそうだな」と、読者は予想します。

 作者が「読者に予想してほしくて、伏線を『分かるように』用意する」ということです。

 読者がズカズカ小説を読み進めていると、すねのあたりにピアノ線がピンと張ってあるイメージです。
「おや?」
 と読者は立ち止まり展開を予想する、これが「張る伏線」です。これを使うと、読者が今後のストーリーをすんなり受け取ってくれます。

 いきなりヒーローが敗北したら文句が出てしまいます。しかし伏線を「張って」おくけば、「うわ、なんか負けそうなんだが……」と、心の準備をさせることができます。これによって、物事がスムーズに進むということです。

 いわゆる「死亡フラグ」もこれにあたります。最近では死亡フラグを立てておいてそれを華麗に回避するパターンが増えてきましたが、ひと昔前は正直にフラグ回収して、キャラクターが死ぬことも多かったですね。

 以上が張る伏線です。

伏せる伏線

 伏線なんだから伏せてるに決まってるじゃないか、と思わないでください。前段の張る伏線のイメージは伏せていませんでした。こちらは伏せているのです。つまりはそういうことで、伏せる伏線というのは先程とは反対に、作者が「読者に『分からないように』伏線を用意する」ことです。

 もちろん、小説が終わっても伏線が分からない、ということではありません。クライマックスでようやく明かされる衝撃事実と同時に、それまで伏せていた伏線について説明が入ります。読者が「え! それも伏線だったのかい!」となる、アレです。

 このサイトでは度々登場するジャンルですが、推理小説ではこの伏せる伏線がとても重要だと思います。

 読者がズカズカ小説を読み進めて、張る伏線に引っ掛かって、ストーリーを納得しながら読み進めますが、伏せる伏線には気付きません。そして小説も終盤に差し掛かり、「まさか」と振り返ると、それまで伏せていた伏線が草むらから一気に飛び出してくる……そこには「驚き」があります。

 「伏せる伏線」は文学ではあまり役に立たないでしょう。稚気というか、楽しさを追求した先にあるテクニックだと思います。エンタメ小説、ターゲット小説を書く時には強力な武器になると思います。あとは「ネタバレ厳禁」の映画にも必須ですね。

 ということで、紹介させていただいた、二種類の伏線を意識してプロット作りをしてみてはいかがでしょうか。

 伏せる伏線の具体例を示せないのが残念です。いまいちピンとこないという方は、推理小説やショートショートを片っ端から読んでみましょう。
「あっ!」
 と思ったら、それです。

 私の趣味ですが、おすすめ推理小説のページを設けてありますので、片っ端から読んでみてほしいと思います。推理小説はネット検索すると思いがけずネタバレを食らってしまいますので、タイトルだけ覚えておいて、本屋さんで見つけた時にさらっと購入して読んでほしいと思います。

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